それでも綺羅は止まらない。

苦しそうに呼吸を繰り返しながら、震える拳を振り下ろそうとする。

その時だった。

星那が静かに綺羅の後ろへ立つ。


真尋「星那!」


那瑠「危ねぇ!」


止める声も聞かず、星那はゆっくり両腕を伸ばした。

そして後ろからそっと綺羅を抱きしめる。

綺羅の身体がびくりと震えた。


綺羅「っ……!」


次の瞬間。

綺羅は反射的に身体を捻り、星那を振り払おうとする。

肘が振られる。

足が動く。

それでも星那は避けない。


綺羅「離せッ!!」


苦しそうな叫びが響く。

そのまま勢いよく振り返った綺羅は、拳を振り上げる。

しかし目の前にいたのは、逃げようともしない星那だった。

星那は真っ直ぐ綺羅を見つめる。

そして今度は、正面から優しく綺羅を抱きしめた。


星那「……綺羅。」


低く、優しい声が耳元で響く。


星那「俺だよ。星那」


その一言が、綺羅の止まっていた時間を少しずつ動かし始めた。