ドンッ。

ドンッ。

鈍い音だけが、静まり返った商店街へ響いていた。

綺羅は苦しそうに呼吸を繰り返しながら、倒れた男へ何度も拳を振り下ろしている。

男はもう抵抗すらできない。

それでも止まらない。


真尋「綺羅!!」


大きな声が響く。

しかし、綺羅の耳には届かない。


那瑠「おい!もう終わってる!」


綾人「綺羅!」


誰が呼んでも反応はない。

まるで目の前に煌月がいることすら見えていないようだった。


綺羅「……やめろ。」


苦しそうに呟く。

その瞳には、目の前の男達ではなく、別の日の景色が映っていた。

紫月はその姿を見つめながら、小さく息を呑む。


紫月(……やっぱり。)


あの喧嘩だ。

転入初日に見た、あの異常な強さ。

そして今日。

その動きは、誰かを倒すためじゃない。

守れなかった誰かを、今も守ろうとしているような拳だった。

その時だった。

黒焔の下っ端の一人が、震える声を漏らす。


男「こいつ……月華だ……」