黒いワンボックスカーが街を駆け抜ける。

車内には誰一人として口を開く者はいなかった。

ただ、エンジン音だけが静かに響く。

やがて橘が急ブレーキを踏む。

キィィッ――!!

車が止まる。

全員が一斉に外へ飛び出した。

その瞬間。


真尋「……っ。」


目の前の光景に、全員の足が止まる。

道路には黒焔の下っ端達が何人も倒れていた。

鉄パイプにチェーンや折れた木刀。

武器が辺りへ散乱している。

誰一人として立ち上がれない。

そして、その中心。

制服を返り血と土で汚した一人の少女が立っていた。

苦しそうに肩で息をしながら。

倒れた男の胸ぐらを掴み、何度も拳を振り下ろしている。

ドンッ。

ドンッ。

ドンッ。

男はもう意識すらない。

それでも綺羅は止まらない。


綺羅「……やめろ……やめろ」


その声は目の前の男ではなく、過去へ向けられていた。

星那はその姿を見た瞬間、何も言わずゆっくり一歩を踏み出した。