綺羅の呼吸が、一気に乱れ始めた。

男の手が腕へ触れた、その瞬間だった。

――フラッシュバック。

血の匂いに倒れ込む琉羽。

震える自分の手。


『綺羅……。』


『生きろ。』


頭の奥で、何度も何度もあの日の声が響く。


綺羅「……っ。」


胸が締め付けられる。

苦しくて息が吸えない。

目の前にいる男達と、あの日の景色が重なって見えた。


男①「おい、大丈夫か?」


男②「顔色悪いぞ?」


男達はただ遊び半分で声を掛けているだけだった。

けれど今の綺羅には、その声さえ遠く聞こえる。

男①は心配したのか、もう一度綺羅の肩へ手を伸ばした。

その瞬間。


綺羅「……触るな。」


低く押し殺した声。


男①「は?」


綺羅は苦しそうに顔を歪めながら、一歩だけ後ろへ下がる。

唇を強く噛み締め、肩で荒く息を繰り返す。

それでも男達は異変に気付かない。


男②「だからさ、落ち着──」


その言葉が最後まで続くことはなかった。