目を閉じる。

すると、思い出したくもない記憶が浮かび上がる。

アスファルトへ広がる赤い血。

震える自分の手。

腕の中で力なく笑う琉羽。


『そんな顔すんな。』


『お前には笑っててほしい。』


その声が耳の奥で何度も響く。


綺羅「……っ。」


胸が苦しくなる。

呼吸が浅くなる。

何年経っても忘れられない。

忘れようとしても、身体が覚えている。

あの日、自分は守れなかった。

守ると約束したのに。

助けられなかった。

綺羅は唇を強く噛み締めた。

爪が掌へ食い込む。

それでも込み上げる感情を押し込めるように、何度も深呼吸を繰り返した。


綺羅「……帰ろ。」


そう呟き、静かに立ち上がる。

墓石へ一度だけ頭を下げると、ゆっくり霊園を後にした。