食事を終え、全員で「ごちそうさまでした」と手を合わせる。

おばちゃんは満足そうに頷くと、食器を片付けながら笑った。


おばちゃん「またみんなでおいでね。」


那瑠「もちろん!」


真尋「いつもありがとうございます。」


綾人「また来ます。」


紫月も小さく会釈をする。

綺羅も立ち上がり、おばちゃんへ深く頭を下げた。


綺羅「ごちそうさまでした。すごく美味しかったです」


おばちゃんは嬉しそうに笑う。


おばちゃん「ありがとう。今度はもっとゆっくりしていきなさい」


その言葉に綺羅は少しだけ目を潤ませながら微笑んだ。


綺羅「……はい。」


店を出ると、夕焼けが街を赤く染めていた。

心地よい風が髪を揺らす。

那瑠達は車へ向かいながら楽しそうに話している。

その少し後ろを、綺羅と星那が並んで歩いていた。

会話はない。

けれど沈黙は苦にならなかった。

少し歩いたところで、星那がふと足を止める。

綺羅もつられて立ち止まった。


綺羅「星那?」


星那は何も言わず、自分の飲んでいたペットボトルを綺羅へ差し出す。


星那「喉、渇いたでしょ。」


綺羅は一瞬きょとんとしたあと、小さく笑った。


綺羅「……ありがとう。」


まただ。

この人は何も言わない。

なのに、いつも先に気付いてしまう。

その優しさに触れるたび、閉ざしていた心が少しずつほどけていくのを、綺羅はまだ知らなかった。