その耳は、ほんの少しだけ赤く染まっていた。

綺羅はその変化に気付いていた。

けれど、何も言わない。

言えばきっと、もっと照れる気がしたから。

店内には再び穏やかな時間が流れ始める。

誰かが笑い、誰かが箸を動かし、湯気の立つ味噌汁からは優しい香りが漂っていた。

そんな何気ない時間が、綺羅にはどこか新鮮だった。

これまで誰かと食卓を囲んでも、心から落ち着けたことなんてなかった。

いつも周りを警戒していた。

隙を見せないように。

弱さを悟られないように。

それが当たり前だったから。

だけど今は違う。

那瑠は唐揚げを頬張りながら大笑いし、真尋はそんな那瑠に呆れたように笑う。

綾人は二人のやり取りを見て肩を竦め、紫月は静かにお茶を飲みながらその様子を眺めていた。

騒がしいのに、不思議と居心地がいい。

そんな空気の中で、綺羅はふと隣を見る。

星那は黙々とご飯を食べていた。

さっきまで耳を赤くしていたことなんて忘れたように、いつもの眠たそうな表情へ戻っている。

綺羅は小さく笑みを零した。


綺羅「……ありがとう。」


小さく呟くと、星那は箸を止めて綺羅を見る。


星那「……ん。」


返ってきたのは、いつも通り短い返事だけ。

それでも十分だった。

それだけで、胸の奥が少しだけ温かくなる。