那瑠「そういえばさ。」


突然、後ろを振り返る。


那瑠「綺羅って好き嫌いある?」


急に話を振られ、綺羅は少し驚いた。


綺羅「好き嫌い?」


那瑠「ある?」


綺羅は少し考えてから首を横へ振る。


綺羅「特にはないかな。」


真尋「じゃあ安心だな。」


綾人「今日行く店、何でもあるし。」


綺羅「どこ行くの?」


真尋「俺らの行きつけ。」


那瑠「安くてうまい!」


綾人「店のおばちゃんがめちゃくちゃ世話焼きなんだよ。」


三人は楽しそうに話し始める。

そのやり取りを聞いているだけで、自然と頬が緩んだ。

まるで本当に家族みたいだ。

その時、不意に車が少し大きく揺れた。


綺羅「きゃっ……。」


身体がバランスを崩す。

咄嗟に身体を支えようとした、その瞬間。

星那がそっと綺羅の腕を支えた。


星那「大丈夫?」


綺羅「……う、うん。」


近い。

思わず見上げると、星那も綺羅を見ていた。

目が合う。

数秒間、どちらも動かなかった。


橘「悪い悪い、段差見落とした。」


前から聞こえてきた橘の声で、二人は同時に我に返る。

星那は何事もなかったように手を離した。

綺羅は小さく「ありがとう」と呟き、少しだけ熱くなった頬を窓の外へ向けた。