夕方。

窓から差し込む光が、少しずつ茜色へ変わっていく。

真尋達は出掛ける準備を始め、それぞれ荷物をまとめていた。

綺羅もソファから立ち上がり、制服の乱れを整える。

ふと窓へ映った自分を見る。

昨日までの私は、誰とも関わらないと決めていた。

誰も信じないし誰にも頼らない。

そうやって生きていこうと思っていた。

それなのにたった一日で、こんなにも笑っている自分がいる。

綺羅は小さく笑い、隣へ目を向ける。

そこには眠そうに欠伸をする星那がいた。


綺羅「星那。」


星那「ん?」


綺羅「……ありがとう。」


星那は少しだけ目を丸くする。

何のお礼なのかは聞かない。

代わりに、小さく笑って答えた。


星那「どういたしまして。」


その笑顔を見た綺羅の胸は、また少しだけ温かくなった。

そして星那もまた、自分の胸に芽生え始めた小さな感情の正体を、まだ知らないままだった。

――二人の距離は、気付かないうちに、昨日より少しだけ近付いていた。