「それにしても、寝起きの乃愛もすっごく可愛いね」
私の寝癖頭に、そっと伸びてきた綺麗な指先が頭を優しく撫でる。
愛おしそうに髪に触れる愁くんは、私の頭でまぬけにはねている寝癖を、優しくなおしてくれた。
ドキッ……。
な、なんかこれって……、すごく恋人っぽいかも……?
「……あ、ありがとうっ」
「どーいたしまして」
そう言って綺麗に笑う愁くんは、普通にしてればどこをとっても絵になるほど顔が綺麗だった。
そんな彼に優しくされると、流石に胸がドキドキして照れてしまう。
朝からおかしな事件が起きているというのに、愁くんのペースに飲み込まれた私は、完全に流されていた。
「どうしたの?」
「な、なんでもないよっ」
「そう?」
にっこりと笑った愁くんは、何かを思い出すような顔をすると静かに口を開く。
「ねぇ乃愛」
「……ん?」
「俺は学校なんてどうでもいいんだけど、早くしないと遅刻するよ?」
………!!!!!!
「しゅ、愁くんが驚かせるから忘れてたじゃんっ!!ち、遅刻しちゃうっ!!」
「えー、俺のせい?
俺は、乃愛のためにせっかく教えてあげたのにひどいなぁ」
ひどいなんて言いながら慌てる私を見て頬杖をつきながら、顔を緩ませる愁くん。
今までドキドキしていた私の胸は、目の前の愁くんより遅刻への焦りに変わっていく。
そんな私を愁くんは、まったく焦りもせずにゆったりとした口調で「乃愛可愛い」なんて言いながら、相変わらず愛おしそうに見つめて笑っているのだった。



