いじわるな指先に惑わされる恋なんてしたくないです!

「宇佐美さん、今日はありがとうございました…!」

全く酔うことのなかった帰り道、駅まで一緒の宇佐美さんを追いかけた。
一応、お礼を言っておこうかと思って。

なんとなく、言いそびれてたから。

「宇佐美さんのおかげで、今日は…」

足取りも軽く帰れる。ふわふわした中家まで帰らなくていいし、飲まなきゃよかったーって後悔もない。


これも全て、宇佐美さんが気を利かせてくれたからー…


「うわー、酔っちゃったかもな~!」

って思ったのに、急に宇佐美さんが顔をしかめた。頭を押さえて俯いて、はぁーなんて重く息を吐くから。

「俺、酒飲めないんだよね」

「えぇ!?」

そんなこと言われて声ひっくり返ちゃったし。

「宇佐美さんも飲めないんですか!?」

何ですか、そのカミングアウトは!それって今言うことですか!?

だから宇佐美さんの前にはウーロン茶があって、本当はただ宇佐美さんが飲んでいたのを私にくれただけー…

「あのっ」


ー…っ!


ぎゅっと、手を握られた。

一瞬、息が止まるんじゃないかってくらいびっくりした。


大丈夫ですか?って声をかけようと思ったのに出て来なくなった。


「歩けないから、手繋いで」


絡ませるように握られた手にドクンッと胸の奥が声を出す。

ピクッと固まってしまった私の手はされるがまま、1本1本隙間に入り込んだ指の感触に神経が集まってくるみたい。

白くて華奢なのに熱を帯びた指先は骨ばって、男の人を感じられずにはいられなかった。

「…っ」

思い出しちゃう、あの夜を思い出し…っ

あの日も飲み会の帰り道だった、部署の飲み会で飲み過ぎちゃった宇佐美さんは上機嫌で。

そんな楽しそうに笑うことあるんだなーって思ってると、駅にあるストリートピアノにおもむろに腰掛けたの。

すぅっと息を吸えばその瞬間表情が変わって、丁寧に鍵盤を叩き始めた。

まずピアノが弾けたことにも驚いたのにその姿が凛として、いつもの宇佐美さんからは想像出来ない姿で。

白くて細くて長い指先は軽やかに鍵盤を…


ん?飲み過ぎちゃった宇佐美さん??


あの時、宇佐美さんはお酒…
飲んでたよね?


上機嫌になるくらい飲んで、それはどう見ても苦手には見えなくてー…


「蓮見、そんな顔するなよ」