いじわるな指先に惑わされる恋なんてしたくないです!

…ちょっと遅れてしまった。
普通に仕事が終わらなくて、今日は特に何か頼まれたわけじゃないけど自分の仕事で手いっぱいだった。

だから飲み会が始まってたぶん30分後ぐらい、遅れて行く方がなんだかんだ気まずいなーって思いながらそろーっと居酒屋に入った。

奥の部屋だって宇佐美さんから連絡が来てたからこの先の部屋かな…

「あ、蓮見!お疲れ!」

「お疲れ様です」

扉を開けた瞬間、こっちこっちと宇佐美さんに呼ばれたから手招きされた方にササッと向かって空いていた宇佐美さんの隣の席に座った。
一番奥の一番隅っこ、偶然空いてたから座っただけなんだけど。

「そこもう空いてない!?」

同じように遅れて来た木下さんがやって来た。急いできたみたいで額には少し汗が滲んでる。

木下さんは確か宇佐美さんと同期の営業さん、今日も外回りからそのまま来たんじゃないかと思うと…

「あの、こっ」

どうぞって立ち上がろうと思ったのに、グイッと宇佐美さんに腕を引っ張られた。

「木下、あっち空いてる」

「え~っ、あっち部長の前なんだけど!」

「早いもん勝ちだから」

「遅くまで仕事してきた俺に言うセリフか!」

相変わらずにこりと笑ってた宇佐美さんに木下さんはちょっと嫌そうだった。

それはそう、お酒を飲むと話の長い部長の前に座ったら最後永遠と相手をすることに…
でも暑い中外回りして来たんだと思うと譲ってあげた方がいいかなぁなんて思ったりして。

「あの宇佐美さん、私ここじゃなくても…っ」

どうせそんなお酒も飲めないんだからちょっとくらい部長の相手だってしてもね、喋ってればお酒飲んでる風に見えるかもしれないし…って思ったんだけど。

「だーめ、蓮見はここ」

なのに、キュッと腕を掴んだ手の力が強くなるから。

なんですか、それ。
なんでそこで笑うんですか。

ダメだとわかっててもドキドキしてしまう。

早くその手を離してほしい、じゃないと私お酒なんか飲まなくても酔いそうになる。

「俺の下僕じゃん?」

「……。」

…え、そうゆうこと?

またドキドキしてしまったじゃないですか、どうしてくれるんですか。

なんですか?
配膳でもさせられるんですか?

は???