レディ・マーメイド

翌日のクリスマス。
二人は仕事を終えると初めてのデートに出かけた。

きらめくイルミネーションの並木道をドライブして、夜景がきれいに見渡せるレストランでディナーを楽しむ。

ショッピングモールの大きなツリーを眺め、手を繋いで海沿いを歩いた。

「なんか、等間隔にカップルが並んでないか?」
「ふふふ、ほんとだ。きれいに揃ってますね」
「ああ、見事に均一だ。目印でも貼ってあるのか?」

真剣に地面を見下ろす亜紋がおかしくて、樹莉は笑い声を上げる。

「可愛いな、樹莉の声」
「え? なあに、突然」
「いつも思ってた。辺りが暗いと余計に感じる。樹莉の声は透き通るようにきれいで美しい」

そう言うと亜紋は身をかがめて樹莉にキスをした。

「ちょ、亜紋さん! ここ外なのに」
「でもみんなやってるぞ」
「だからって、それは理由になりません」
「当たり前だ。そんな理由でキスするか。俺が樹莉を好きだからだ」

有無を言わさず樹莉の身体を抱き寄せると、亜紋はもっと熱く口づける。

樹莉が驚いて亜紋の胸を押し返そうとした時だった。

ドンと音がしたかと思うと、空がパッと明るくなる。

「えっ、なに?」

見上げた先に、色鮮やかな花火がきらめいた。

「わあ、きれい!」

樹莉は目を輝かせて夜空を見つめる。

次々と打ち上がる花火は、赤と緑のクリスマスカラーやハートの形で、周りからも歓声が上がった。

「亜紋さん、とってもすてきね」
「ああ」

そう言いつつ、亜紋は花火に照らされた樹莉の横顔ばかり見ている。

「亜紋さん見て、ほら。お星さま! 可愛いね」
「そうだな」
「ちゃんと見てる?」
「ああ、見てる」
「どこ見てるの?」
「樹莉の顔」
「もう! ほら、今度はツリーの形だよ」

興奮気味の樹莉に、亜紋は目尻を下げっぱなしだった。