「樹莉さま、本当にお戻りになるんですか?」
菅井が帰ったあと、部屋で荷物をまとめる樹莉に、神谷がオロオロしながら声をかける。
「ええ。もうこれ以上、ここにお世話になる訳にはいきませんから」
「ですが、亜紋さまはひと言もそんなことは……」
「私が決めたんです。神谷さん、長い間お世話になりました。神谷さんのおかげでどんなに心が救われたかわかりません。本当にありがとうございました」
改めてお礼を言うと、神谷が「樹莉さま」と涙ぐむ。
「そんなお別れみたいなことおっしゃらないでください。またお会いできますよね?」
樹莉は小さく微笑んで「いつかまた会いに来ます」とだけ伝えた。
最後に亜紋と黒木がいる執務室に行き、挨拶する。
「亜紋さん、黒木さん。本当にお世話になりました。なんてお礼を言えばいいのかわからないくらい、お二人に助けていただきました。ありがとうございました」
頭を下げると涙が込み上げてきて、ギュッと唇を引き結ぶ。
「樹莉さん、そんな急に出て行かなくても……」
黒木の言葉に、顔を上げて首を振った。
「私、少しでも早く帰りたいんです、自分の部屋に。犯人も捕まったから、安心して帰れます」
本当は帰りたくない。
ちっとも安心なんてしていない。
けれど、こうでも言わないと引き留められそうだった。
一人で部屋に帰って、どんなに寂しさが込み上げるかと思うと怖い。
決意が揺らぎそうになる自分を、必死に奮い立たせた。
(これ以上迷惑はかけられない。ここは私がいるべき場所ではないんだから)
大きく息を吸ってから、もう一度お辞儀をする。
「それでは、ここで失礼します」
「樹莉さん、せめて車で送らせて」
黒木の申し出に「いいえ、大丈夫ですから」と答えた時だった。
「樹莉」
亜紋が立ち上がってそう呼ぶ。
「はい」
「俺が送る。行こう」
掛けてあったジャケットに腕を通し、亜紋はドアへと歩き出す。
少し迷ってから、樹莉はあとを追いかけた。
菅井が帰ったあと、部屋で荷物をまとめる樹莉に、神谷がオロオロしながら声をかける。
「ええ。もうこれ以上、ここにお世話になる訳にはいきませんから」
「ですが、亜紋さまはひと言もそんなことは……」
「私が決めたんです。神谷さん、長い間お世話になりました。神谷さんのおかげでどんなに心が救われたかわかりません。本当にありがとうございました」
改めてお礼を言うと、神谷が「樹莉さま」と涙ぐむ。
「そんなお別れみたいなことおっしゃらないでください。またお会いできますよね?」
樹莉は小さく微笑んで「いつかまた会いに来ます」とだけ伝えた。
最後に亜紋と黒木がいる執務室に行き、挨拶する。
「亜紋さん、黒木さん。本当にお世話になりました。なんてお礼を言えばいいのかわからないくらい、お二人に助けていただきました。ありがとうございました」
頭を下げると涙が込み上げてきて、ギュッと唇を引き結ぶ。
「樹莉さん、そんな急に出て行かなくても……」
黒木の言葉に、顔を上げて首を振った。
「私、少しでも早く帰りたいんです、自分の部屋に。犯人も捕まったから、安心して帰れます」
本当は帰りたくない。
ちっとも安心なんてしていない。
けれど、こうでも言わないと引き留められそうだった。
一人で部屋に帰って、どんなに寂しさが込み上げるかと思うと怖い。
決意が揺らぎそうになる自分を、必死に奮い立たせた。
(これ以上迷惑はかけられない。ここは私がいるべき場所ではないんだから)
大きく息を吸ってから、もう一度お辞儀をする。
「それでは、ここで失礼します」
「樹莉さん、せめて車で送らせて」
黒木の申し出に「いいえ、大丈夫ですから」と答えた時だった。
「樹莉」
亜紋が立ち上がってそう呼ぶ。
「はい」
「俺が送る。行こう」
掛けてあったジャケットに腕を通し、亜紋はドアへと歩き出す。
少し迷ってから、樹莉はあとを追いかけた。



