レディ・マーメイド

翌日は仕事が休みで、樹莉は部屋で神谷の淹れてくれた紅茶を飲みながら思案していた。

(なにか手掛かりはないかしら。犯人達は私がコースターを持っていると疑っている。ゴミ置き場を荒らしたあとも。ということは、まだ犯人達もコースターを見つけ出せていないはず)

そうは思うものの、何度考えようが樹莉にも心当たりはない。

(ゴミ置き場を荒らして出てこなかったからって、どうして頑なに私を疑うんだろう。まるで私が持っているって確信しているみたいに)

どこかでコースターを手にするのを見られたのだろうか?

そうだとしても、本当に自分は持っていないのだ。

堂々巡りに疲れて、樹莉は仕事用のトートバッグを手繰り寄せた。

ゴソゴソと探してみるが、やはりコースターはない。

代わりに小さなメモ帳に手が触れた。

(最近はこれを使わずに済むようになったわね)

思わず笑みをもらして手帳を取り出す。

バンケットスタッフとなった時に、静香がつきっきりで仕事を教えてくれ、忘れないようにと懸命に書き留めていたメモ帳だった。

(懐かしいな。こんな簡単なことまでメモしてる)

ペラペラとめくってみると、在庫の場所や仕事の流れなど、今となってはすべて頭に入っている内容がびっしりと書き込まれていた。

お守りのようにベストのポケットに入れていたが、さすがにもう見返すこともなく、ちょうどあのパーティーの騒動以降はずっとバッグに入れっぱなしにしている。

(こうしてみると、私も少しは成長してるんだな。って、ん?)

閉じようとした時、最後のページになにかが見えて手を止めた。

(なにこれ)

斜めに数字が並んでいるが、自分の字ではないし見覚えもない。

(あれ? しかもこれ、よく見ると透明シールだ)

指で触って確かめる。

無造作に貼られた透明のシールは、貼った、というよりは、くっついてしまった、とでもいうべきか。

しばらくぼんやり考えてから、樹莉はハッとして目を見開いた。

(このメモ帳、あのパーティーでベストの左ポケットに入れていたはず)

そしてその左ポケットは……

樹莉は立ち上がると、急いで隣の部屋に向かった。