レディ・マーメイド

やって来た警察官が現場検証をするかたわら、一人一人事情を訊かれる。

黒木も亜紋に言われた通り、全てを包み隠さず話した。

「なるほどねえ……。九條亜紋さんにもさっき伝えましたが、そんな話はもっと早く警察に言ってもらわないと。時間が経ってからでは捜査は上手くいきませんよ」

菅井(すがい)と名乗った恰幅のよい50代くらいの警察官は、責めるように黒木にそう言う。

「はい、申し訳ありませんでした」
「そんなに信用ならんものですか? 我々警察は」
「いえ、とんでもない。ですが、あくまで自分達の憶測にすぎないことを話すのは時期尚早かと思いまして……」
「で、今になって頼んでこられた訳だ。小早川樹莉さんを襲った犯人を捕まえてくれと」

黒木はただ「申し訳ありません」と頭を下げることしかできない。

どんなに言い繕ったところで、自分のしたことはそう捉えられてしかるべきだった。

「まあ、いいでしょう。早速捜査を始めますよ。まずは女子更衣室に残された指紋。小早川さんによれば、犯人の女は窓を開けたそうですからね、そこから重点的に採取します。それから防犯カメラの映像。これは2週間前のパーティーが終わったあとの記録も合わせて調べます。あなた方の話では、ゴールデンワールドホテルとサンセットトラベルの社長二人が怪しいということでしたね」
「はい。ですがなにも証拠はありません」
「そこはこっちも上手く訊き出しますよ。ただし、あなた方の疑っていること全てを、その社長さん達に追及するつもりはありません。我々はあくまで、証拠と証言をもとに捜査を進めていきますので」

よろしいですか?と問われ、黒木は「はい」と頷いた。