レディ・マーメイド



「申し訳ありません、私の落ち度です。パーティーの日に更衣室を荒らした犯人は、どうやら女だったようです。今日再び更衣室に侵入されました」

電話で亜紋に報告しながら、黒木は苦々しい思いを噛みしめる。

以前パレ・ド・フローラの支配人に女子更衣室が荒らされた件で話を聞いた時、支配人は防犯カメラの映像から「黒いパーカーのフードをかぶった男」と言っていたが、それは思い込みだったのだろう。

実際は女だったのだ。
そもそも女子更衣室なら、女の方が侵入しやすい。

なぜ支配人の言葉を鵜呑みにしたのかと、黒木は自分が腹立たしくなった。

「恐らく、ゴミ置き場を荒らしたのもその女。樹莉さんを襲った男と同様、須藤の手下だと思われます」

そして樹莉から聞いた話を亜紋にも伝えた。

女はやはりコースターを探していて、それがないと報奨金が手に入らないと言っていたこと。

コースターに書かれた暗号を解いて既に金を手に入れたのか?と疑われたことを。

「……だいたいのことはわかった。とにかく警察の事情聴取に応じろ。樹莉は本当に無事なんだな?」

亜紋は先程から何度も樹莉の様子を確かめる。

「はい。ケガもありませんし、犯人の女とも接触していません」
「わかった。俺も仕事を切り上げてそちらに向かう。黒木、くれぐれも樹莉のそばを離れるな」
「かしこまりました」

電話を切ると、黒木は今度こそ樹莉にピタリと付き添っていた。