「亜紋さん、今夜花火大会があることを知っていて、私をここに連れて来てくれたんですか?」
二人で肩を並べて花火を眺めたあと、ガーデンの温室を歩きながら樹莉は尋ねた。
「ん? まあ、結果的にな」
「結果的に?」
どういう意味かと首を傾げると、亜紋は少し言い淀む。
「俺は知らなかったが、黒木と神谷が知っていて。黒木は俺に早く帰れと言うし、神谷は樹莉をガーデンに連れて行けとうるさいし。その結果、今こうしている」
樹莉は一瞬ポカンとしてから吹き出して笑った。
「やだ、亜紋さん。ムードの欠片もないですね。こんなロマンチックなシチュエーションなのに」
「すまん」
「いえ、謝らないでください。私だって亜紋さんの恋人でもなんでもないですから。でも来年の花火を彼女と観ることになったら、その時はもう少し彼女が喜ぶようなことを言ってあげてくださいね」
「……たとえば?」
うーん、そうだな、と樹莉は視線をそらして考え込む。
「花火に見とれる君の横顔に、俺は見とれたよ、とか?」
「ああ、確かに」
「……え?」
樹莉が視線を上げると、亜紋は足を止めた。
「微笑みながら花火を見つめる樹莉の横顔が、優しくて美しかった」
樹莉は思わず息を呑んで真っ赤になる。
(え、あの、急になにを言い出すの?)
どうしていいのかわからずうつむき、ようやく「あ!」と思い直した。
「なるほど、それは彼女が喜ぶセリフですね。うんうん、すてきです。百点満点!」
満面の笑みを向けると、亜紋は一瞬目を見開いてから苦笑いする。
「来年、そう言ったら喜んでくれるかな」
「はい、きっと喜ばれますよ。亜紋さんにそんなセリフを言われて、堕ちない女の子はいません!」
「どうだか……」
「ん? なにか言いました?」
「いや、なにも」
また前を向いて歩き出す亜紋と手を繋ぎ、樹莉はカランコロンと小気味いい下駄の音を響かせながら、幸せなひとときを噛みしめていた。
二人で肩を並べて花火を眺めたあと、ガーデンの温室を歩きながら樹莉は尋ねた。
「ん? まあ、結果的にな」
「結果的に?」
どういう意味かと首を傾げると、亜紋は少し言い淀む。
「俺は知らなかったが、黒木と神谷が知っていて。黒木は俺に早く帰れと言うし、神谷は樹莉をガーデンに連れて行けとうるさいし。その結果、今こうしている」
樹莉は一瞬ポカンとしてから吹き出して笑った。
「やだ、亜紋さん。ムードの欠片もないですね。こんなロマンチックなシチュエーションなのに」
「すまん」
「いえ、謝らないでください。私だって亜紋さんの恋人でもなんでもないですから。でも来年の花火を彼女と観ることになったら、その時はもう少し彼女が喜ぶようなことを言ってあげてくださいね」
「……たとえば?」
うーん、そうだな、と樹莉は視線をそらして考え込む。
「花火に見とれる君の横顔に、俺は見とれたよ、とか?」
「ああ、確かに」
「……え?」
樹莉が視線を上げると、亜紋は足を止めた。
「微笑みながら花火を見つめる樹莉の横顔が、優しくて美しかった」
樹莉は思わず息を呑んで真っ赤になる。
(え、あの、急になにを言い出すの?)
どうしていいのかわからずうつむき、ようやく「あ!」と思い直した。
「なるほど、それは彼女が喜ぶセリフですね。うんうん、すてきです。百点満点!」
満面の笑みを向けると、亜紋は一瞬目を見開いてから苦笑いする。
「来年、そう言ったら喜んでくれるかな」
「はい、きっと喜ばれますよ。亜紋さんにそんなセリフを言われて、堕ちない女の子はいません!」
「どうだか……」
「ん? なにか言いました?」
「いや、なにも」
また前を向いて歩き出す亜紋と手を繋ぎ、樹莉はカランコロンと小気味いい下駄の音を響かせながら、幸せなひとときを噛みしめていた。



