「黒木さん!」
ロビーの1番端のソファに座っていた黒木は、タタッと近づいて来た私服姿の樹莉を見て立ち上がる。
「樹莉さま、お疲れ様でした」
「黒木ウッディーさんも、お疲れ様でした」
黒木は思わず苦笑いを浮かべる。
「その話題はもうご勘弁を」
「ふふっ、大人気でしたねウッディーさん。すてきなお相手は見つかりませんでしたか?」
「ええ。私はそういう方面は全く疎いので。それより樹莉さま、例のコースターの件ですが」
声をひそめると、樹莉も真剣な表情で顔を寄せた。
「亜紋さんに伝えたところ、それだなとおっしゃっていました。樹莉さま、ゴミ置き場を案内していただけませんか? 可能性は極めて低いですが、2日前のパーティーで使われたコースターを探したいのです」
「わかりました、ご案内します。ですが、ゴミは毎日収集されますから、2日前のものはなにかの手違いでもない限り残っていないかと……」
「ええ、構いません。もしかして、ゴミを荒らした犯人がどこかに隠している可能性もありますので。まあ、持ち去られた可能性の方がはるかに高いですが」
とにかく行ってみることにした。
「バックヤードを通らずに行きましょうか。こちらです」
樹莉はホテルのエントランスを出るとぐるりと後ろに回り込み、植木が立ち並ぶ間を通り抜けて業者や関係者の車が出入りする広いスペースに黒木を案内した。
「あそこのコンテナに、分別したゴミを入れています」
「なるほど。近くに行ってもいいですか?」
「ええ」
いくつか並ぶコンテナの横に、重量計が置いてあった。
「ここにゴミ袋を1つずつ載せて『可燃ゴミ』などの項目をパネルで選びます。重さが自動で計測されてプリンターからラベルが出て来るので、それをゴミ袋に貼ってからコンテナに入れています」
その日ごとのゴミの量や集計の仕方は、ロイヤルクレストと同じだった。
黒木はまず、周辺に不審なゴミや隠された物がないかを見て回る。
「やっぱり2日前のゴミはもうないか」
そう言って振り返ると、樹莉が【可燃ゴミ】と書かれたコンテナに手を入れていた。
「うーん、やっぱりここにあるのは全て今日の日付けのラベルが貼ってありますね」
「樹莉さま、そんな。きれいな手が汚れてしまいます。私がやりますので」
ゴミ袋を1つ1つチェックする樹莉を、黒木は慌てて止めた。
「お気遣いなく。私はここのスタッフですよ? ゴミだって捨ててます」
「ですが、樹莉さまはロイヤルクレストの大切なお客様ですし」
「まさか、そんな。私の方がお世話になってるんです。自分ではあんなハイクラスなホテル、一生泊まれません」
そう言って樹莉は、ゴソゴソと奥の袋もかき分ける。
「樹莉さま! 本当にもうおやめください。亜紋さんに締め上げられてしまいます」
「亜紋さんが? 黒木さんを締め上げるんですか?」
「そうですよ」
「ふふふ、こわーい。じゃあ内緒にしましょ。ね?」
明るく笑う樹莉に見とれて、黒木はそれ以上言葉が出て来なかった。
ロビーの1番端のソファに座っていた黒木は、タタッと近づいて来た私服姿の樹莉を見て立ち上がる。
「樹莉さま、お疲れ様でした」
「黒木ウッディーさんも、お疲れ様でした」
黒木は思わず苦笑いを浮かべる。
「その話題はもうご勘弁を」
「ふふっ、大人気でしたねウッディーさん。すてきなお相手は見つかりませんでしたか?」
「ええ。私はそういう方面は全く疎いので。それより樹莉さま、例のコースターの件ですが」
声をひそめると、樹莉も真剣な表情で顔を寄せた。
「亜紋さんに伝えたところ、それだなとおっしゃっていました。樹莉さま、ゴミ置き場を案内していただけませんか? 可能性は極めて低いですが、2日前のパーティーで使われたコースターを探したいのです」
「わかりました、ご案内します。ですが、ゴミは毎日収集されますから、2日前のものはなにかの手違いでもない限り残っていないかと……」
「ええ、構いません。もしかして、ゴミを荒らした犯人がどこかに隠している可能性もありますので。まあ、持ち去られた可能性の方がはるかに高いですが」
とにかく行ってみることにした。
「バックヤードを通らずに行きましょうか。こちらです」
樹莉はホテルのエントランスを出るとぐるりと後ろに回り込み、植木が立ち並ぶ間を通り抜けて業者や関係者の車が出入りする広いスペースに黒木を案内した。
「あそこのコンテナに、分別したゴミを入れています」
「なるほど。近くに行ってもいいですか?」
「ええ」
いくつか並ぶコンテナの横に、重量計が置いてあった。
「ここにゴミ袋を1つずつ載せて『可燃ゴミ』などの項目をパネルで選びます。重さが自動で計測されてプリンターからラベルが出て来るので、それをゴミ袋に貼ってからコンテナに入れています」
その日ごとのゴミの量や集計の仕方は、ロイヤルクレストと同じだった。
黒木はまず、周辺に不審なゴミや隠された物がないかを見て回る。
「やっぱり2日前のゴミはもうないか」
そう言って振り返ると、樹莉が【可燃ゴミ】と書かれたコンテナに手を入れていた。
「うーん、やっぱりここにあるのは全て今日の日付けのラベルが貼ってありますね」
「樹莉さま、そんな。きれいな手が汚れてしまいます。私がやりますので」
ゴミ袋を1つ1つチェックする樹莉を、黒木は慌てて止めた。
「お気遣いなく。私はここのスタッフですよ? ゴミだって捨ててます」
「ですが、樹莉さまはロイヤルクレストの大切なお客様ですし」
「まさか、そんな。私の方がお世話になってるんです。自分ではあんなハイクラスなホテル、一生泊まれません」
そう言って樹莉は、ゴソゴソと奥の袋もかき分ける。
「樹莉さま! 本当にもうおやめください。亜紋さんに締め上げられてしまいます」
「亜紋さんが? 黒木さんを締め上げるんですか?」
「そうですよ」
「ふふふ、こわーい。じゃあ内緒にしましょ。ね?」
明るく笑う樹莉に見とれて、黒木はそれ以上言葉が出て来なかった。



