レディ・マーメイド

翌朝。
神谷が運んで来てくれた朝食を食べて身支度を整えると、亜紋が黒木と共に部屋に現れた。

「樹莉、これから黒木の車で送らせる。そのまま黒木はホテルで、樹莉の仕事が終わるまで樹莉を警護するから、安心してくれ。それから上司や、もしかしたら警察にも事情を訊かれるかもしれない。樹莉が話したいように話してくれればいい。なにかあればいつでも俺の携帯に連絡してくれ」
「はい、わかりました」

電話番号を交換すると、トートバッグを肩に掛けて部屋を出る。

最後にもう一度、亜紋に「樹莉」と呼ばれた。

「気をつけて行っておいで。待ってるから」

優しい口調に一瞬驚いてから、樹莉は笑顔で「はい」と答えた。