レディ・マーメイド

「神谷さん。亜紋さんって、いつもあんな感じなんですか? 掴みどころがないというか、なにを考えているのかわからないというか……」

昼食を終えてゲストルームに戻ると、樹莉は神谷と布ナフキンを折っていた。

お互いに知らない折り方を教わり、新しい形を編み出そうと試しながら、ふと思い出して訊いてみる。

神谷は「そうですわね」と優しく目を細めた。

「亜紋さまはいつも真顔で口数少ないのですけど、樹莉さまに対してだけは違うような気がします。あんな亜紋さまは初めて見ました」
「あんな、って?」
「なんだかとても楽しそうで」

ええ!?と樹莉は驚く。

「それって、さっきの食事中のことですか?」
「そうですわ。亜紋さまとあそこまで会話が弾むなんて、樹莉さまが初めてです」
「会話が、弾む? あれで?」
「ええ、あれで」

ナフキンを折りながら、神谷は嬉しそうだ。
樹莉はますます首をひねる。

すると神谷は、いいことを思いついたとばかりにパッと顔を上げた。

「樹莉さま、あとでガーデンをお散歩されませんか? 温室や噴水広場もあって、ここロイヤルクレストの自慢のガーデンなんです」
「ガーデン! はい、ぜひ行きたいです」
「かしこまりました。あとで亜紋さまに伝えておきますね」

ん?と首を傾げるが、神谷はまた楽しそうにナフキンを折り始めた。