レディ・マーメイド

大きなダイニングテーブルを挟んで、樹莉と向かい合う。

神谷が食事を並べる間、樹莉は目を輝かせてテーブルウェアを見つめていた。

「このナフキンの折り方、『スターの末広』ですよね。とってもすてき」
「ええ。ランチなので色もゴールドで明るくしてみました。普段はロイヤルブルーのナフキンで王冠の形に折ることが多いのですけど」
「ロイヤルクレストですものね、王冠が似合います。それにしてもこのスター、折り方が本当にきれい。崩すのがもったいないです」
「まあ、ふふっ」

樹莉と神谷はすっかり打ち解けたようだ。
笑顔で楽しそうに話している。

「樹莉さまのホテルは、どんな形に折ることが多いですか?」
「うちは花をモチーフにしたホテルなので、深紅のナフキンでバラを折ることが多いですね。あとはナフキンリングでドレスにしたり、季節に合わせたお花、今ならユリとか蓮の花とかも」
「いいですね」
「本当は紫と水色のナフキンを重ねて紫陽花を作ってみたいのですけど、難しくて」
「それは確かに難しそう。でも出来たらすてきでしょうね」

2人は真剣に、こうすればどうかと折り方を考え始めた。

「紙ナフキンでは折れるので、それをもとにアレンジすればできるかな、と」
「そうですわね。あとでわたくしも挑戦したいです」
「一緒にやってみませんか?」
「ええ」

微笑み合ってから、二人はようやく亜紋の存在を思い出したらしい。

「亜紋さま、失礼いたしました」
「いや、構わない。楽しそうでなによりだ」

神谷は自分や黒木と同じ32歳で、このホテルで10年以上働いてくれているが、こんなにも明るい表情を浮かべるのを亜紋は初めて見た気がした。