金木犀の奏鳴曲(ソナタ)

気に止めなければ些細なことだが、詩月にとっては普段からやりなれた事のようだ。

工房の調律師たちも気づいていながら、敢えて触れない、口には出さない。

詩月はそれに気づいているようだ。

工房の調律師たちは詩月がいることで、詩月に越されないよう、向上心を持って技術磨きをしている。

何より工房が整理整頓され、綺麗になった。

雑然としていた工房が、何が何処にあるかが一目瞭然になった。

職員たちが工具も丁寧に磨き、手入れが行き届いている。

洗面所に、いつの頃からかハーブ入りの石鹸が置いてある。

詩月が作って持ち込んでいる石鹸だと云う。

爪の隙間に入り込んだオイルがよく落ち、手荒れをしないと好評だ。

詩月のヴァイオリンの師匠の妻が、経営しているサロンで出しているハーブ茶の出涸らし茶葉と薬草を利用した石鹸だ。

苛性ソーダを使った正規の作り方ではない。