金木犀の奏鳴曲(ソナタ)

エリザベート王立国際音楽コンクールのピアノ部門の終盤。

周桜宗月が交通事故で怪我をした騒動で、詩月が宗月とは血が繋がっていない事実が表沙汰になった。

その時に、詩月が日本で難病指定されている心臓病だと知らされた。

無理が利かない体だと云う。

見た目には華奢で細身だが、病人には見えない。

だが、事実を知ると思い当たるふしが幾つかあった。

「不自由していることはないか」

修士課程と工房と専門学校それに演奏活動もしている。

かなりハードな日々を過ごしている。

無理をしているのは明白で心配し、詩月本人に訊ねると、詩月は微笑んで答えた。

「気遣いは要りません。用心はしています。自分でダメだ、無理だと思ったら伝えます」

実のところ、詩月の体のことを知るまでは特に気づきもしなかった。

知って初めて詩月を観ていると、詩月が普段からかなり気がけて用心しているのに気づく。