金木犀の奏鳴曲(ソナタ)

小百合は待ちきれないのか、サッとヴァイオリンをケースから取り出し、急いで調弦した。

自分が先に弾き始めるのは不安なのか、詩月が弾き始めるのを待っている。

小百合は詩月が調弦し終わるのを待って、詩月の顔を見上げた。

「小百合、先ず場を暖める。『ハンガリー舞曲』弾けるか?」

「ハンガリー舞曲? ……え、ええ。自信はないけれど」

「合わせる程度でいい」

詩月は小百合の耳元、早口で言うと颯爽と演奏し始めた。

ハンガリー舞曲5番、ヴァイオリン演奏での難易度は中級、有名な曲だ。

激しいテンポの変化、情熱的なメロディ、そしてジプシー音楽の強い影響が特徴だ。

全21曲ある『ハンガリー舞曲集』の中で最も有名で、元々は4手連弾のピアノ曲として書かた。

小百合は場を暖めるーー街頭演奏しなれている彼ならではの言葉だと思った。

有名な曲とは言え、知って入る程度で簡単に演奏できる曲ではない。