金木犀の奏鳴曲(ソナタ)

消毒薬も携帯サイズのものを持ち歩いているし、人通りのある所や人混みではマスク着用する。

大学内でも商店街でも、人か集う場所は、マスク着用している人が多い。

新型ウィルス拡大から3年になる今もーー。

詩月はそれだけ、新型ウィルス発生は世の中に多大な影響を与えたのだと、今さらながらに思う。

何事もなかった日常が、ある日一変してしまう恐ろしさは、未だに強く残っている。

今できること、今やりたいことを先送りにしたくないと、詩月がウィーンに留学し強く感じていることだ。

工房へ戻る車中、先輩調律師が詩月に訊ねた。

「調律師の資格取った後、さらに上を目指すのか? コンサートホールや公の演奏会場の調律資格を取るのか?」

「できれば取りたいですけど、それには経験年数が足りませんから受験資格がありません」

「ああ、そうか~」

「先ず、調律師の学校をちゃんと出て調律師資格を」