金木犀の奏鳴曲(ソナタ)

父の事故で明らかにされた事実も。

結果的には、「周桜詩月」の知名度が上がった。

最近ではピアニスト志望の周桜詩月が、調律師見習いをしていると云う物珍しさで、名指しで調律を依頼してくる客もいる。

工房のベテラン調律師や先輩を差し置いてはと思い、お得意さまに「見習いなので」と、丁寧に断ろうとするが「BOSSが腕試しだ。やってみろ」と前のめりだ。

先輩調律師とペアで現場に向かい、調律する様子を終始観察されながら調律するため、圧が半端ない。

中学2年生から街頭演奏をしてきて良かったと思っている。

テンパったことはない。

「よし」と一旦、腹を決めたら緊張とは無縁だからだ。

口には出さないが、調律も演奏と同じ、或いは演奏の延長と割り切っている。

いや、調律自体が楽しい。

自分の手でピアノの音が変わっていく様子が楽しい。