春は眩しくて、届かない




昼休みの終わり、チャイムの余韻がまだ教室に残っている。


りのんと別れて教室に戻り、さっきの会話を何度も頭の中でなぞっていた。



——もし恋をしたら、教えてね。



りのんの声はいつも通り軽かったのに、
その言葉だけが、少しだけ胸に沈んでいる。



「……やば」



小さく呟いて、陽奈は机に額を軽くつけた。


嘘をついた。


別に大した嘘じゃない。
“なんでもないふり”をしただけ。
たぶん誰だってやるようなこと。


でも、りのんに対してそれをしたのは初めてだった。


今まで、りのんには何でも話せた。



嬉しいことも、むかついたことも、どうでもいいことも。
それが当たり前だったのに。