春は眩しくて、届かない



校庭の木が、風に揺れている。
昨日よりも少しだけ、秋の色が濃くなっていた。



「……そっか」



小さくそう返して、お弁当のご飯をつつく。



何も知らないふりをするのは、
思っていたより、少しだけ難しかった。



「ひな?もし恋をしたら、わたしに教えてね!」



軽い冗談みたいな声。
でもその奥に、ほんの少しだけ“本気じゃないようで本気”が混ざっている。



陽奈は一瞬、きょとんとしてから笑う。



「なにそれ、急に」



「だってさ」



お弁当の卵焼きをつつきながら、視線を落としたまま続ける。



「ひな、そういうの隠せなさそうだし」



「えー、失礼なんだけど」



笑いながら返す陽奈。
でもその笑いはいつもより少しだけ早かった。



「でも、ちゃんと教えてほしい」



「なんで?」



「わたし、ひなのことちゃんと知っていたいから」



その言葉に、陽奈の手が一瞬止まる。