——今度。
その響きだけが、 胸の奥に残る。
「……別にいいのに」
小さく言うと、 柏木くんは少しだけ笑った。
「俺がしたいだけ」
その言い方が、 ずるいと思った。
秋の夕陽が差し込む教室で、 陽奈は誤魔化すみたいに「じゃあ遠慮なく」と笑う。
廊下に出て歩き出したとき、柏木くんが焦った様子で言う。
「あ、やっぱり今日このあと予定ある?」
突然の言葉に、 陽奈の心臓が跳ねる。
「……え、ないけど」
そう答えかけて、 ふと頭に浮かぶ。
——りのん。
いつもなら、 放課後は一緒に帰ることが多い。
陽奈は少しだけ迷ってから、 小さく聞いた。
「……あの、もしかして水瀬も一緒?」
柏木くんが一瞬きょとんとする。
「りのん?」
「え、いや……なんとなく」
自分でも変なことを聞いた気がして、 陽奈は誤魔化すみたいに笑う。

