教室に入ると、もう何人かが席についていた。
「あ、鈴野!」
知っている声に呼ばれて、陽奈はぱっと笑う。
「ほんとだ、ひな!同じクラスじゃん!」
一気に周りの空気が明るくなる。
「あれ、柏木もいるじゃん」
誰かの声に、陽奈はそちらを見る。
「おー、同じクラスかよろしく」
相変わらず淡々としているのに、不思議と周りに人が集まる。
――柏木湊。
学年のほとんどが名前を知っているくらいには有名で、整いすぎた顔立ちと、どこか気だるそうな雰囲気を持っている。
毎日のように校舎裏へ呼び出されている、なんて噂まであるくらいだ。
それなのに本人は、そういう視線をまるで気にしていない。
「……騒がしいクラスになりそうだな」
ぼそっと落とされた言葉に、教室のあちこちから「えー!」と声が上がる。
マイペースな声に、陽奈は思わず笑った。
あれだけ目立つのに、どこか特別ぶっていないところが不思議で、
少しだけ気になった。
「みんなよろしくねー!」
笑いながら、自分の席へ向かった。
ふと、スマホを握る。
――りのん、大丈夫かな。
そんな考えが、一瞬だけ頭をよぎった。

