春は眩しくて、届かない



その時。


ぶる、とスマホが震えた。


画面には、“陽奈”の文字。



『りのーーん!!』



開いた瞬間、大きな文字が飛び込んできて、
わたしは思わず笑ってしまう。


『勉強してた!?えらい!!』



『わたし塾で死んでる!!』



『数学が敵!!!!』


さっきまで胸の中に広がっていた静かな熱が、
少しだけいつもの温度に戻っていく。



りのん「ひなそれ毎回言ってるよ笑」



陽奈「だって毎回敵なんだってー!」
 

 
  「まだ英語と戦わなくちゃなのつらいー!」



りのん「生きて帰ってね」



陽奈「りのん冷たいよー!」



画面を見ながら、
りのんは自然と笑っていた。


やっぱり、陽奈と話すと安心する。


なのに胸のどこかでは、
夏の夜風の中で並んで歩いた時間が、
まだ静かに残っていた。