「ねえ、りのん」
「ん?」
陽奈が、歩きながらこちらを見る。
「別々でもさ、ほんとにすぐ会えるよね?」
その問いかけは、軽いのに少しだけ確かめるみたいだった。
私は小さくうなずく。
「うん。廊下とか、絶対会うと思う」
「でしょー!」
陽奈は安心したみたいに笑う。
同じ速度で、同じ廊下を進む。
なのに、掲示板を見たあたりから、ほんの少しだけ違う世界にいるみたいだった。
「あ、りのんこっちだよね?」
教室の前で、陽奈が足を止める。
「うん、ここ」
そう答えると、陽奈は一瞬だけ立ち止まったあと、いつもの明るさに戻った。
「じゃあまたあとでね!」
そう言って、軽く手を振る。
私も小さく手を振り返す。
「またね」
陽奈はすぐに廊下の先へ走っていく。
その背中が見えなくなるまで、私はその場に立っていた。
――まだ、完全に離れたわけじゃない。
それなのに、少しだけ空気が違って感じた。

