春は眩しくて、届かない



外へ出ると、さっきよりもずっと暗くなっていた。


図書館の冷たい空気とは違う、夏の夜のぬるい風が頬を撫でる。


街灯の光が、静かに道を照らしていた。


ふたり並んで歩く。


夜の住宅街は思っていたより静かで、足音だけが小さく響いた。



「……なんか変な感じ」



「なにが」



「柏木くんとこうやって歩いてるの」



正直に言うと、湊は少し笑った。



「たしかに」



「学校だと、もっと人に囲まれてるイメージあるし」



「それ、水瀬も言うよな」



「だってほんとじゃん」



りのんが小さく笑う。


すると湊は、少しだけ空を見上げた。



「……別に、ああいうの得意なわけじゃないけど」



「え?」



「勝手に集まってくるだけ」



街灯の光が、横顔を淡く照らす。


学校で見る柏木湊は、もっと遠い存在みたいだった。


でも今は、ただ同じ帰り道を歩いている。



「水瀬はさ」



「うん?」



「なんで鈴野と仲良くなったの」



不意な質問に、りのんは少しだけ目を瞬く。


夏の夜風が、静かに吹き抜けた。