「……でも」
りのんは参考書へ視線を落とす。
「もう高2だし、将来のことも考えなきゃだね」
その言葉に、湊は少しだけ目を細めた。
「急に真面目」
「真面目に勉強したいんでしょ?」
わたしが小さく言い返すと、柏木くんは
「それはそう」と笑う。
窓の外では、夏の日差しが強く光っていた。
「水瀬は?」
「え?」
「将来、なんかなりたいのあるの」
少しだけ考えてから、小さく首を振った。
「……まだちゃんとは決まってないかも」
「でも、成績で将来の選択肢狭めたくないなって」
その言葉に、湊は少し黙る。
それから、ふっと小さく笑った。
「水瀬って、ちゃんとしてるよな」
「そうかな」
「うん」
柏木くんは開いたままの参考書に視線を戻しながら続ける。
「なんか、ちゃんと先のこと考えてる感じする」
「俺、そこまで考えてねえかも」
「柏木くんは?」
「んー……」
柏木くんはシャーペンを指先で回した。
「まだよく分かんない」
「でも、選べる方がいいってのは分かる」
静かな声だった。
その言葉が、少しだけ嬉しい。
“分かる”って言われるたび、 少しずつ距離が近づいていく気がした。

