春は眩しくて、届かない



自動ドアが静かに開く。


ひんやりした空気と、本の匂い。


夏の熱を少しだけ忘れられるこの場所を、りのんは気に入っていた。


奥の窓際。
いつも座る席へ向かおうとして、ふと足が止まる。



「……あ」



見覚えのある後ろ姿。


柏木湊だった。


窓際の席で、片手にシャーペンを持ったまま参考書を開いている。


制服の袖を少しまくっていて、外の光が横顔を淡く照らしていた。



——図書館、来るんだ。



少しだけ驚きながらも、りのんはそのまま視線を外す。


話しかける理由もないし。


そう思って、自習室の奥にあるいつもの席へ向かった。