春は眩しくて、届かない



いちごフェアのパフェが運ばれてきて、陽奈が「写真撮ろー!」とスマホを向ける。


その途中。


りのんが、倒れそうだった紙ナプキンをそっと押さえる。


窓際で揺れていた小さな花を、無意識に直す。


そんな小さな動きを、陽奈がふと見ている。



「……りのんってさ」



「ん?」


陽奈はストローをくるくる回しながら笑う。



「なんか、いいなーって思う時ある」



「え?」



予想してなかった言葉に、りのんが目を瞬く。



「なんていうか……落ち着く」



陽奈は少しだけ照れたみたいに笑った。



「わたし、すぐ騒いじゃうし、勢いで動くからさ」



「でもりのんって、ちゃんと周り見てるじゃん」



「さっきも紙ナプキン押さえてたし」


そんなところ見てたんだ。


りのんは少し驚く。



「……普通じゃない?ひなの明るいところ好きだよ?」



「普通じゃないよー」


陽奈は即答した。



「そういうの自然にできるの、わたし結構羨ましい」


その言葉に、りのんは何も返せなくなる。



——羨ましい。



「わたし、りのんのそういうとこ好きだもん」



「わたしもだよ」



今までずっと、そう思っていたのは自分だけだと思っていたから。


窓の外で春の光が揺れる。


その瞬間だけ、りのんの目には陽奈が少し遠い“ヒーロー”じゃなくて。


同じ目線にいる普通の女の子みたいに見えた。