春は眩しくて、届かない



そんなわたしに意地悪するリーダー格の女子に、私は何も言えなかった。


ただ黙って、従うしかなかった。


でも陽奈は違くて。



「それ、おかしくない?」



はっきりした声が、教室の空気を切った。


クラスでのいつもの明るさのままなのに、その言葉だけは真っ直ぐで。



「なんで水瀬さんがそんなことしなくちゃいけないの?」



一瞬、教室が静かになった。


誰も、何も言えなかった。


私も、何も言えなかった。


ただ、陽奈の背中だけを見ていた。


それからいじわるされることはなくなった。


その頃からだった。


陽奈は、私と一緒にお昼を食べるようになった。


いつもの中庭で、何でもない話をして。


笑って、くだらないことで盛り上がって。


気づけばそれが“当たり前で私たちのいつも”になっていた。



——陽奈が親友って言ってくれるようになったのも、そんなお昼休みだ。



特別なきっかけなんてないみたいに、自然に。


でも本当は、あの日から全部が変わっていた。


陽奈は、わたしのヒーロー。


あの日も、今も。


まっすぐで、怖いものなんてないみたいに立ってくれて。


私が言えなかった言葉を、代わりに言ってくれた人。



——きっと、陽奈には敵わない。



そう思うのに、どうしても隣にいたくなる。


それでも陽奈に感謝しなきゃいけないと思った。