それから。
「水瀬」
「……ん」
「よかったら」
春の風が、 ふたりの間を静かに通り抜ける。
柏木くんは真っ直ぐりのんを見た。
「俺と付き合ってください」
その言葉は、 びっくりするくらいまっすぐだった。
飾ってなくて、 でもちゃんと大事で。
一瞬、 泣きそうになる。
冬の始まり。
“好きか分からない”って悩んでた自分。
陽奈に背中を押されて、 ガトーショコラを作った日。
通知ひとつで嬉しくなってた夜。
全部、 この瞬間に繋がっていた気がした。
りのんは目を細める。
胸の奥が、 あたたかくて苦しくて、 でも幸せでいっぱいだった。
「……はい」
小さく頷く。
でも、 それだけじゃ足りない気がして。
りのんは少し照れながら笑った。
「よろしくお願いします」
その瞬間。
柏木くんが、 ほんの少しだけ肩の力を抜いて笑った。
「……よかった、マジで」
春の夕暮れ。
桜が静かに舞う公園で。
わたしたちの関係は、 “特別”に変わった。
柏木くんはベンチにもたれながら、 少し遠くを見るみたいに笑った。

