春は眩しくて、届かない



春風が吹く。

桜の花びらが、
歩道を静かに転がっていく。


しばらく歩いて、
ふたりは小さな公園へ辿り着いた。


ブランコ。
少し古いベンチ。
夕焼けに染まる砂場。


前、
初雪の日にも来た場所。



「……あ」



柏木くんが小さく笑った。



「覚えてた?」



「当たり前に覚えてるよ」



あの日のことを思い出す。


連絡先を交換した帰り道。
降り始めた雪。
“風邪ひくなよ”って言われた声。


胸の奥が、
じんわりあたたかくなる。


柏木くんはベンチに座って、
隣を軽く叩いた。



「座る?」



わたしは小さく頷いて、
その隣に座る。


近い。


でも、
前より少しだけ自然に感じる距離。