春は眩しくて、届かない



その横顔を見つけた瞬間、
りのんの心臓がまた落ち着かなくなる。



「ごめんね……お待たせしました」



声をかけると、
柏木くんが顔を上げた。



「あ」



少しだけ目を細める。



「ごめんね、掃除長引いちゃって」



りのんがそう言うと、
柏木くんは首を横に振った。



「いや、俺も今来た」



絶対嘘だ。


だって、
足元にホットココアが二本ある。


それに気づくと、
柏木くんは少し気まずそうに視線を逸らした。



「……寒いかなと思って」



そう言って、
一本を差し出す。



「え、これわたしに?」



「他に誰がいるんだよ」



少しぶっきらぼうな言い方。
でも、
耳だけ少し赤い。



「……ありがとう」



受け取ったココアは、
びっくりするくらいあたたかかった。