春は眩しくて、届かない

バレンタイン2日前の放課後。



「ひな、明日さ」



帰り支度をしていた陽奈に声をかけると、ひなはすぐ振り返った。



「んー?」



「うち来ない?」



その瞬間、陽奈の目がきらっと光る。



「……それはもしや」



「お菓子作り手伝ってほしくて」



数秒の沈黙。


次の瞬間。



「きたーーーーーーー!!!!!!」



教室に響きそうな声で叫ばれて、わたしは慌てて口を塞いだ。



「ちょ、声大きい!」



「だって!!ついに!!りのんが!!バレンタインを!!」



「違っ、そんな大げさなやつじゃないから!」



「ガチじゃん!!!!」



陽奈はもう完全にテンションが高かった。


そのくせ、



「で?なに作るの?」
って聞く声だけ妙に真剣で、りのんは少し笑ってしまう。



「……無難にガトーショコラ」



「え、絶対おいしいやつ」



「失敗しにくいし」



「りのんっぽ」



そう言って笑う陽奈の顔を見て、少しだけ安心する。


去年の今頃なら、
こんなふうに恋バナをして笑えるなんて思わなかった。