春は眩しくて、届かない




『……ごめんね』



その言葉に、
胸が小さく揺れる。



『お父さんのことで、
湊にいっぱい我慢させた』



窓の外で、
車の音が遠く通り過ぎる。



『私、
余裕なくて』



『湊のこと見てるつもりで、
全然見れてなかった』



俺はスマホを握り直した。


ずっと聞きたかった言葉なのに、
簡単には受け取れない。



「……俺も悪かった」



絞り出すみたいに言う。



「家出て、
連絡も無視して」



『生きてるならよかった』



母親の声が、
少し震えていた。


その瞬間、
胸の奥に張っていたものが、
少しだけ崩れる。


俺は小さく息を吐く。



「……まだ、
すぐ帰るとかは分かんねぇ」



正直に言う。



「でも、
ちゃんと話す」



電話の向こうで、
母親が静かに泣いている気配がした。



『うん』



『ありがとう』