それから、 掠れた声。
『……お母さんは』
『あんたに、お父さんみたいになってほしくなかっただけ』
「それが重かったんだよ」
ぽつりと落ちる。
「ずっと」
窓の外、 風が木を揺らす。
『……分からなかった』
母親が小さく言う。
『どうしたらよかったのか』
その声は弱かった。
でも、 今さら優しくされると余計苦しい。
湊は目を閉じる。
「もういい」
『湊、待って』
「……切る」
『ちゃんと帰ってきて話』
通話を切った。
画面が暗くなる。
静かだった。
静かなのに、 胸の中だけぐちゃぐちゃだった。
湊は壁にもたれたまま、 ゆっくり座り込む。
水瀬なら、 なんて言うだろう。
そんな考えが浮かんで、 すぐ打ち消す。
「……だりぃ」
呟いた声だけが、 薄暗い階段に落ちた。

