春は眩しくて、届かない



風が吹く。


木漏れ日が揺れる。


俺はその横顔を見た。


まっすぐだった。


綺麗事じゃなくて、
ちゃんと俺のこと考えて言ってる顔。


その瞬間、
不思議と少しだけ肩の力が抜けた。



……ああ。



俺、
この人のそういうとこ好きなんだなって思った。


でも。


今日はもう、
その気持ちを言える空気じゃなかった。


俺は小さく息を吐いて立ち上がる。



「今日は、わざわざ鈴野との時間もらって悪かった」



水瀬が目を瞬く。



「話したいことあったけど」




「今日はやめとくわ」



今言ったら、
きっと勢いになる。


ちゃんと整理して、
ちゃんと伝えたい。


水瀬には、
そうしたかった。


俺は少し笑う。



「ありがとう、水瀬」



そう言うと、
水瀬は少しだけ困ったみたいに笑った。


秋の風が、
中庭を静かに通り抜けていった。