春は眩しくて、届かない




「だからね」



「今回も、結局ひなに助けられたんだと思う」



「……私、なにも」



「したよ」



りのんはちゃんと言い切る。



「ちゃんと本当のこと言ってくれた」



「ちゃんと苦しんでくれた」



「私から逃げなかった」



静かな声だった。



「それって、すごいことだよ」



陽奈の目から、また涙が落ちる。


でももう、止めようとはしなかった。



「だからさ」



「自分のこと最低とか言わないで」



「……っ」



「私にとってひなは」



「ずっと、かっこいい親友だから」



その瞬間。


陽奈はとうとう堪えきれなくなって、
泣きながら笑った。



「なにそれぇ……」



「ほんとだもん」



「りのん、ずるい……」



「ひなが言ったんじゃん」
『りのん優しすぎる』って」



「そういう意味じゃないし……!」



ふたりで泣きながら笑う。


ぐちゃぐちゃなのに、
不思議と苦しいだけじゃなかった。

陽奈は涙を拭きながら、小さく息を吸う。



「……りのん」



「ん?」



「私も」




「りのんがいてくれてよかった」



夜の始まりみたいな空の下。


その言葉だけが、
静かに、確かに、
ふたりの間へ残っていた。