春は眩しくて、届かない



放課後になっても、陽奈からの連絡は来なかった。


廊下を歩きながら、りのんは足を止める。


窓の外は、昨日と同じように夕方の色をしているのに。


何かだけが違う。


スマホが、ようやく震えたのはそのときだった。



『ごめん、今日はちょっと休んじゃった。』



短い文字。


それだけ。


りのんはしばらく画面を見つめる。


返信を打とうとして、やめて。


また打って、消して。


結局、送れなかった。



(会いたい)



そう思ったのに、言葉にできなかった。


ただ一つだけ分かる。


陽奈が、いつもみたいじゃない。


その事実だけが、静かに胸の奥に残っていた。


りのんはスマホを握ったまま、しばらく立ち尽くしていた。



『大丈夫?』




『今から行こうか?』



打ちかけた文字が、画面の中で行ったり来たりする。


でも、どれも送れなかった。


心配だった。


陽奈が学校を休むなんて、普通じゃない。


それなのに、どこかで引っかかる感覚があった。



(今は、行かないほうがいい気がする)



理由はうまく言えない。


ただ、そう思った。


きっと陽奈は、明日になったらまたいつも通り笑って来る。


「昨日ごめんねー」なんて言いながら、何もなかったみたいに隣に座る。


そんな気がした。



だから今は——



りのんはスマホをそっと伏せる。


画面が暗くなる。


そのまま一度だけ深く息を吐いた。



「……明日、だよね」



誰に言うでもなく呟いて、カバンを肩にかける。