もうとっくに、夜は深くなっていた。
さすがに眠たくてあくびが漏れる。
「早く風呂入れ」
呆れたようなため息とともに、王子はクローゼットを開けた。
ハンガーの隙間から、無造作に取り出されたシャツとスウェット。
それを、迷いなくあたしに投げてくる。
「着替え、これな」
「……ちょっと待って」
受け取ったそれは、明らかに王子のものなのに、不思議と拒否感がない。
むしろ——
(はじめから、泊まること前提みたいじゃない……)
落ち着かない感覚が、じわっと広がる。
「ありがと…………ん?」
「洗濯してるぞ?」
「違うわよ……なんでパンツまであるのよ」
明らかに、未開封とはいえ女物の下着に、顔をしかめる。
綾人は一瞬だけ視線を逸らした。
「適当に買った」
「適当でサイズ合うわけないじゃない!」
「細かいこと気にすんな」
「気にするわよっ!」
耳まで熱くなって叫ぶと、綾人はくつくつと喉を鳴らす。
「洗面所は右な」
「ちょっと待って、やっぱり、いったん帰ろ——」
「いいから、早く行けって」
背中を押されるように、洗面所の方へ向かう。
逃げるタイミングなんて、いくらでもあったはずなのに。
浴室に射す都会の灯りが、非日常だと告げている。
何もかもが規格外で、自分の範疇を越えている。
「…………イヤって言えばいいだけじゃない」
――王子が推しに似てるから?
ちがう、それだけじゃない。
泡立って香るボディソープも。
しっとりと髪を包んでくれてるトリートメントも。
全部、王子が毎日使っているもの。
彼の日常に、あたしが少しずつ混じっていく。
怖いはずなのに。
王子に押し切られることを、どこか期待している自分がいる。
(……どれだけ弱いのよあたしはっ)
(でも、スキンケアとかも用意してくれてた……)
未開封の使いきりサイズのもの。
(……ここ、他の女も来てるの?……って、なにモヤッとしてるの)
邪推な考えをシャワーとともに流し、いそいで浴室から出ることにした。
さすがに眠たくてあくびが漏れる。
「早く風呂入れ」
呆れたようなため息とともに、王子はクローゼットを開けた。
ハンガーの隙間から、無造作に取り出されたシャツとスウェット。
それを、迷いなくあたしに投げてくる。
「着替え、これな」
「……ちょっと待って」
受け取ったそれは、明らかに王子のものなのに、不思議と拒否感がない。
むしろ——
(はじめから、泊まること前提みたいじゃない……)
落ち着かない感覚が、じわっと広がる。
「ありがと…………ん?」
「洗濯してるぞ?」
「違うわよ……なんでパンツまであるのよ」
明らかに、未開封とはいえ女物の下着に、顔をしかめる。
綾人は一瞬だけ視線を逸らした。
「適当に買った」
「適当でサイズ合うわけないじゃない!」
「細かいこと気にすんな」
「気にするわよっ!」
耳まで熱くなって叫ぶと、綾人はくつくつと喉を鳴らす。
「洗面所は右な」
「ちょっと待って、やっぱり、いったん帰ろ——」
「いいから、早く行けって」
背中を押されるように、洗面所の方へ向かう。
逃げるタイミングなんて、いくらでもあったはずなのに。
浴室に射す都会の灯りが、非日常だと告げている。
何もかもが規格外で、自分の範疇を越えている。
「…………イヤって言えばいいだけじゃない」
――王子が推しに似てるから?
ちがう、それだけじゃない。
泡立って香るボディソープも。
しっとりと髪を包んでくれてるトリートメントも。
全部、王子が毎日使っているもの。
彼の日常に、あたしが少しずつ混じっていく。
怖いはずなのに。
王子に押し切られることを、どこか期待している自分がいる。
(……どれだけ弱いのよあたしはっ)
(でも、スキンケアとかも用意してくれてた……)
未開封の使いきりサイズのもの。
(……ここ、他の女も来てるの?……って、なにモヤッとしてるの)
邪推な考えをシャワーとともに流し、いそいで浴室から出ることにした。



