あたしの頼んだブルームーンが届いたタイミングで、綾人も入店してきた。
「マスター、いつもの」
「お疲れさま、先に飲もうと思ったのに」
「もうちょい、待っとけよ」
ネクタイと首元のボタンを外して緩める。
少し汗ばんだ綾人の表情が、妙に色っぽい。
「あ、やば」
「何が」
「綾人の顔に久々ときめいた」
「は?」
「いち様が横にいるからかな」
「一緒にすんな」
「それより、これ使えそうか?」
綾人が撮った写真を見せてくる。
「うわっ、なにこれ。あたし変な顔」
「楽しそうだからいいだろ」
「消して」
「断る」
「綾人っ!」
いつものなんでもないやり取りに、心が落ち着く。
その時。
ブルルル――
社用のスマホが震える。
画面には鮫島の名前。
あたしは店の外に出て、電話に出る。
「もしもし?」
『せ、先輩っ……』
明らかに声がくぐもっていて、様子がおかしい。
『私……やっちゃいました』
「どうしたの?」
『先輩が撮ってきた写真なんですけど……』
鮫島の震える声に、嫌な予感が背筋を走る。
『確認用フォルダと投稿用フォルダを間違えてしまって……』
『ワタセホテルの公式アカウントから、まだ公開前の写真を投稿してしまいました』
「……え?待って、まだ投稿の確認してなかったわよね……」
『はい……下書き状態のを間違えて……しかも……』
彼女の言葉の続きは、聞く前に分かった。
嫌な予感だけは、いつだって当たる。
『先輩と藤垣統括が写っている写真も……』
(あの廊下のやつ……!)
息が止まる。
「志穂?」
綾人に気付くも、振り返るのが精一杯で。
うまく声が出せない。
『本当にすみません……』
電話口で泣いている鮫島の声。
その瞬間、あたしは反射的に口を開いた。
「大丈夫」
大丈夫じゃないのに。
「管理責任は私だから」
『違いますっ……先輩は確認してない——』
「いいからっ。これは私の責任です」
強い口調に見開く綾人の瞳。
その瞳に映る自分の顔は、まだ泣き顔じゃない。
——全部、自分の責任だと思った。
綾人の顔が、少しだけ険しくなった気がした。
「マスター、いつもの」
「お疲れさま、先に飲もうと思ったのに」
「もうちょい、待っとけよ」
ネクタイと首元のボタンを外して緩める。
少し汗ばんだ綾人の表情が、妙に色っぽい。
「あ、やば」
「何が」
「綾人の顔に久々ときめいた」
「は?」
「いち様が横にいるからかな」
「一緒にすんな」
「それより、これ使えそうか?」
綾人が撮った写真を見せてくる。
「うわっ、なにこれ。あたし変な顔」
「楽しそうだからいいだろ」
「消して」
「断る」
「綾人っ!」
いつものなんでもないやり取りに、心が落ち着く。
その時。
ブルルル――
社用のスマホが震える。
画面には鮫島の名前。
あたしは店の外に出て、電話に出る。
「もしもし?」
『せ、先輩っ……』
明らかに声がくぐもっていて、様子がおかしい。
『私……やっちゃいました』
「どうしたの?」
『先輩が撮ってきた写真なんですけど……』
鮫島の震える声に、嫌な予感が背筋を走る。
『確認用フォルダと投稿用フォルダを間違えてしまって……』
『ワタセホテルの公式アカウントから、まだ公開前の写真を投稿してしまいました』
「……え?待って、まだ投稿の確認してなかったわよね……」
『はい……下書き状態のを間違えて……しかも……』
彼女の言葉の続きは、聞く前に分かった。
嫌な予感だけは、いつだって当たる。
『先輩と藤垣統括が写っている写真も……』
(あの廊下のやつ……!)
息が止まる。
「志穂?」
綾人に気付くも、振り返るのが精一杯で。
うまく声が出せない。
『本当にすみません……』
電話口で泣いている鮫島の声。
その瞬間、あたしは反射的に口を開いた。
「大丈夫」
大丈夫じゃないのに。
「管理責任は私だから」
『違いますっ……先輩は確認してない——』
「いいからっ。これは私の責任です」
強い口調に見開く綾人の瞳。
その瞳に映る自分の顔は、まだ泣き顔じゃない。
——全部、自分の責任だと思った。
綾人の顔が、少しだけ険しくなった気がした。



