「……ばーか、ばーか……あやとの……ばぁか……」
明かりが付いたリビングに入った瞬間、聞こえてきた声に足を止めた。
ソファのクッションに顔を埋めた志穂が、完全に寝落ちしていた。
「何してんだよ……」
苦笑しながら近づく。
どうやら風呂にも入らず、そのまま寝たらしい。
手の中のスマホには、俺とのメッセージ画面が表示されたままだった。
「……悪かったな」
返したくても返せなかった。
仕事終わりに淹れていたミルクティーへ携帯を落とした瞬間は、自分でも意味がわからなかった。
九条には呆れられるし、大垣には笑われるし。
挙げ句の果てに、志穂には連絡できない。
最悪だ。
そもそも、俺はコーヒーを飲むつもりだったのに。
「ったく……」
そっとスマホを取り上げる。
起こさないよう腕を差し込み、抱き上げた。
普段はうるさいのに、寝ていると妙に大人しい。
「……無防備だな」
長い睫毛に、ふわりと揺れる髪。
いつもよく動く唇は、今は静かに閉じている。
抱き上げた腕の中で、志穂が小さく身じろぐ。
「……あやと……」
思わず足が止まった。
「……ん?」
「さみしかった……」
小さな寝言。
その一言に、思考が止まる。
数秒遅れて理解し、思わず笑みがこぼれた。
「……素直だな」
起きているときは絶対言わないくせに、何だそれ。
寝室のベッドへ下ろし、ふと、志穂の細い手首に視線が止まる。
そこには以前贈ったアンクレットが、ブレスレットとして収まっていた。
「……」
無意識なのか、それとも気に入っているのか。
どちらにせよ、思わず口元が緩む。
「覚えてねぇんだろうな」
明日になれば、また強がるんだろう。
だから今だけは知らないふりをしてやる。
「おやすみ、志穂」
志穂の額を指先で軽く弾き、静かに部屋を出た。
明かりが付いたリビングに入った瞬間、聞こえてきた声に足を止めた。
ソファのクッションに顔を埋めた志穂が、完全に寝落ちしていた。
「何してんだよ……」
苦笑しながら近づく。
どうやら風呂にも入らず、そのまま寝たらしい。
手の中のスマホには、俺とのメッセージ画面が表示されたままだった。
「……悪かったな」
返したくても返せなかった。
仕事終わりに淹れていたミルクティーへ携帯を落とした瞬間は、自分でも意味がわからなかった。
九条には呆れられるし、大垣には笑われるし。
挙げ句の果てに、志穂には連絡できない。
最悪だ。
そもそも、俺はコーヒーを飲むつもりだったのに。
「ったく……」
そっとスマホを取り上げる。
起こさないよう腕を差し込み、抱き上げた。
普段はうるさいのに、寝ていると妙に大人しい。
「……無防備だな」
長い睫毛に、ふわりと揺れる髪。
いつもよく動く唇は、今は静かに閉じている。
抱き上げた腕の中で、志穂が小さく身じろぐ。
「……あやと……」
思わず足が止まった。
「……ん?」
「さみしかった……」
小さな寝言。
その一言に、思考が止まる。
数秒遅れて理解し、思わず笑みがこぼれた。
「……素直だな」
起きているときは絶対言わないくせに、何だそれ。
寝室のベッドへ下ろし、ふと、志穂の細い手首に視線が止まる。
そこには以前贈ったアンクレットが、ブレスレットとして収まっていた。
「……」
無意識なのか、それとも気に入っているのか。
どちらにせよ、思わず口元が緩む。
「覚えてねぇんだろうな」
明日になれば、また強がるんだろう。
だから今だけは知らないふりをしてやる。
「おやすみ、志穂」
志穂の額を指先で軽く弾き、静かに部屋を出た。



